畑仕事のお手伝い君の開発

概略

2020年3月より山梨県の自宅近所に200坪以上の畑を借りました。ここにジャガイモやら小松菜やらトウモロコシやら数々の野菜の種をを植えていく段階で、水やりが大変である事に気が付きました。畑から垂直距離で2m程下がった所に湧水が流れているのですが、階段もなく藪や柵で通りにくく、また流れもそれほど多くありません。なので最初は家からバケツで運んでいたのですが、これが大変なのでついに湧水をポンプで汲み上げて水タンクに貯めておくシステムを作成する事にしました。しかし、そこは技術出身の私ですので、出来るだけ安く、使い勝手良く、全自動、ついでに鳥獣対策まで入れてしまおう、という考えに至ったのです。その名も、「畑仕事のお手伝い君」。以下に、本システムの構成と内容を説明致します。

全体構成

下に「畑仕事のお手伝い君」の全体模式図を載せました。水中ポンプを湧水の流れに投入し、2m高い水タンクへと水を汲み上げます。水タンクは満タンになるとフロートスイッチで検出され水中ポンプの駆動は停止します。また鳥獣駆除ボックスには超高輝度LEDの発光基板と超音波スピーカー2個が搭載されております。これらをコントロールするのが制御ボックス内にあるPICマイコンが搭載されたコントローラ基板で、電源は12vの鉛蓄電池から供給されます。また鉛蓄電池へはソーラーパネルで充電される構成で、独立したシステムとなっております。

畑のお手伝い君模式図
畑に設置したところ

本システムを畑に設置した状態を左に示します。写真上部に水タンクがあり、その向こう側の藪の中下に水源があります。水タンク手前ジョウロの向こう側に制御ボックス、写真右寄りにソーラーパネルが、写真左下に鳥獣対策ボックスが映っております。

機能

概略機能

  • 昼間は鉛直方向下方にある水源から鉛直上方に位置するタンクに満タンになるまで水をポンプで吸引移動する。
  • 昼間時は鳥獣駆除の為に40kHzの超音波を5分おきに発生する。また夜間においては超音波と同時に光学的フラッシュを発生する。
  • 電源は鉛蓄電池から供給されるが、鉛蓄電池へはソーラーパネルから充電される。

給水ポンプ

  1. 最大流量:4l/分(揚程差0m時)
  2. 最大揚程差:3m
  3. 定格消費電力:4.2w
  4. 定格電流:0.35A
  5. 供給電圧:11.0~13.5v
  6. 100l-揚程差2.5mのタンクへの供給時間:約30分

ポンプの最大流量は吸引移動される水の揚程差に反比例し、揚程差が大きくなる程(水を高いところに引き揚げる)最大流量は小さくなる。今回の畑の場合、揚程差2.5mでありこの場合流量は3l/分程度であった。ポンプはコントロール基板から制御され、タンク内の水が満タンに達するまで自動的に追加供給されるが、夜間は停止する。夜間に水を使用する事が無いからである。また、何らかの不具合で40分以上ポンプを駆動してもタンクが満タンにならない場合、ポンプの破壊を避けるためコントロール基板はポンプ駆動を停止し、エラー状態に移行する(エラー状態からの復帰方法は制御ボックスの項を参照)。なお、本システムの場合、吸引ポンプの吸引口は詰まりを避けるためフィルターを装着した。

鳥獣駆除ボックス

鳥獣駆除ボックスは以下の写真のように昼光色の高輝度LEDが3個載った基板と超音波スピーカーが2個載った基板で成立する。ストロボ状に発光する光と「大音量」の超音波で鳥や獣を驚かし追い払うのが目的であるが、特に超音波は人間の耳に聞こえない為効果の確認ができていない。超音波は昼夜問わず5分間隔で発音し、フラッシュは夜間のみ5分間隔で発光する。

  • 超音波スピーカー

40kHz±1.5kHz、 116dB以上(at30cm)、 2個搭載

昼夜を問わず5分間隔で、38.5kHz、0.5秒ON-0.2秒OFFを5回繰り返し、さらに41kHz、1秒ON-0.5秒OFFを5回繰り返す。

  • LED基板

LED:色温度-6500k 半値角-120度 光束200lm以下 消費電力-2w 3個搭載

夜間において超音波発音に連続し、0.3秒ON―0.3秒OFFの発光を10回繰り返す。

制御ボックス

制御ボックスには電源用バッテリーとして12vの鉛蓄電池、コントロール基板、アンプ基板が入っている。アンプ基板は超音波スピーカーの為の40kHzを電圧、電流増幅する為の基板であり、鉛蓄電池へはソーラーパネルから充電が行われる。水供給、鳥獣駆除、太陽光による充電等、本システムの制御は全てコントロール基板が行っている。

鳥獣駆除ボックス及び水供給ポンプ以外の主な本システムの部品写真を以下に示す。左からフロートスイッチで水タンク上部に据え付けられて水の満タン状態を検出する。中央は鉛蓄電池で12v-1.2Ah、充電電流は0.36A以下。右はソーラーパネルで開放電圧21.8v、短絡電流0.31A、最大出力5wである。

フロートスイッチ
鉛蓄電池

ソーラーパネル
コントローラ基板

左にコントローラ基板の形状サンプルを示した(本システムでは少し搭載素子が異なる)。本システムの制御について述べる。もともとこの基板は弊社で扱っている「和紙と陶器の灯り」用に開発したのであるが、様々な用途を想定し汎用性を持たせている。CPUはPIC16F1705、 8bitの1チップマイコンである。

簡単なシステムであるがCPUを使用したのは主に2つの理由からである。基本的には水中ポンプをフロートスイッチで直列に接続するのみの構成で最低の機能は果たせるはずであるが、屋外(畑)で湧水を扱うという事で湧水が無くなったり、桶が倒れたり、フロートスイッチが正常に動作しなかったり、と様々な不具合が想定される。水中ポンプが長時間連続駆動されると破壊する為、不具合時の対策を考えた。40分以上の連続駆動で停止させている。もう一つはバッテリー(蓄電池)への充電制御である。ソーラーパネルによる充電を効率よく長年に渡って使用に耐えるには過充電や過電流充電等の対策が必須となる。基板にはCDS(明るさ検知センサ)が搭載されており夜間と昼間を切り替える。いずれも灯り用の技術を流用している。また、CPUを搭載するのでついでに、といってはおかしいが鳥獣対策としてフラッシュと超音波を搭載した。フラッシュは灯りのLEDそのままの技術であるが、超音波も実はそれほど変わらない。灯りでは非接触スイッチで赤外LEDを38kHz程度で発光受信(これはテレビのリモコンと同じ)する構成であるが、赤外LEDの部分を超音波スピーカに切り替えたものである。また基板にはスイッチが1個搭載されており、これは給水ポンプの強制ON-OFFスイッチである。エラー状態で停止している場合、本スイッチをONして給水継続し、その後OFFすると1秒間停止後、通常のフロートセンサ検知モードに戻る仕様になっている。

最後に

畑の水遣り用にタンクに水を貯める、という目的のみ考えた場合強力なポンプと発電機を購入し、その都度(必要な時毎に)電源スイッチを入れればよい、とも考えられるが、いくつか問題があった。スイッチを入れて待っているうちに溜まる程度のポンプは非常に高価であり、そのパワーに見合った発電機も必要(畑は付近に電源が無い為)。さらに湧水はふんだんに流れているわけではなくむしろちょろちょろしているのを堰き止めて汲み上げる状態である事。本システムの給水ポンプは水量が少ないせいもあり安価でその為使用前にちょろちょろタンクに貯めておく仕様とした。その他部品費用は数千円で済ます事が出来た。

実は設置翌日にタンクを確認したところタンク内に水は無くバッテリーは少なくなっておりエラー状態で停止していた。当初何が起こったのか理解が出来なかったが、給水ポンプの排出チューブの出口がタンクの下に設置されていたからであることが判明。給水ポンプの排出チューブがタンク内の水の中にある場合、駆動中は水を揚水するが、停止すると今度は高い所にある水が低いところに圧力差で戻るのである。昼間は逝ったり来たりを繰り返していたが、夜間はポンプ駆動停止する為タンク内の水が空になり、明け方がんばったがついにバッテリーが切れかかった、という状態だったようです。その為タンク内への給水ポンプからの排水チューブは上部に固定するようにしました(写真参照)。

左は水源の中に置かれた給水ポンプからチューブを通って2.5m上の水タンクの中に水が運ばれていく様子の動画です。

 この記事へのコメント

  1. 松村治夫 より:

    改善に向けての試行錯誤の跡がよくわかる記録です。他の技術情報内容もいろいろ充実してますね。「ぐうたらおやじ」から「やりておやじ」に脱皮したようですね。

    • hm-workshop より:

      来年同じものを作る時忘れないように記録しておこうと思ってました。
      全く毎日が試行錯誤です。

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