ソーラーパネル発電の充電池への充電効率改善に関する技術

電源おたすけ君外観

独立型小型電源の「電源おたすけ君」を試作しました。「電源おたすけ君」は最大40w程度のソーラーパネル又は100v商用電源から鉛蓄電池(12v-20Ah)へ充電し、直流12v又は100vACに最大30w程度で出力可能な非常用電源です。下の写真は「電源おたすけ君」の内部に搭載されている基板です。右上の黄色の〇で囲まれた部分がCPU。「おたすけ君」はアナログ信号を直接扱えるPsocというCPUを搭載しております。 CPUには環境温度や明るさの他、バッテリーへ充電する電流も入力されております。なので、CPUのソフトをバージョンアップする事でかなりの変更はハードを変えずに行うことができます。以下では、「電源おたすけ君」のソーラー発電による充電制御で技術使用したソーラー発電に関するMPPT(max peak power tracking)技術についてメモしておきました。

電源お助け君の充電制御回路基板

ソーラーパネルから取り出せる電力はソーラーパネルの発電電圧と出力電流の掛け算で表されますが、これはリニアではありません。 下図のようにソーラーパネルの出力電流は出力電圧に対しほぼ一定(下左図)で推移しますが、引き出せる電力は、電圧x電流なのである電圧まではリニアに上昇しますが、それ以降急激に低下します。下右図のようにソーラー開放電圧のだいたい80%弱(パネルで異なる)で最大となるカーブ(下右図)となります。これはソーラーパネルに接続される負荷(充電回路部分)に依って取り出せる電力が異なる事を意味します。

その為、接続される負荷変動に合わせて最大の電力を取り出せるよう、例の「山登り法(peak tracking)」を行うわけです。「電源おたすけ君」の場合の負荷はバッテリー(鉛蓄電池)なわけで、これは少し厄介です。負荷側電圧はバッテリー電圧にほぼ固定されてしまうからですわけなので。 因みにここんところの回路構成をかなり大雑把にまとめ、下に挙げました。「電源おたすけ君」の電圧制御部分です。

充電部の回路構成

オレンジの枠の中がDC-DC(直流電圧変換)の部分。ソーラーパネルの電圧は左側のSolarから入ってきて、ダイオードD2と保護素子(Protect)を通過後にFETでスイッチングされます。CPUは充電量が最大になるようFETのデューティー比を制御します。ソーラーから取り出される電力は、正確にはProtectの入力電圧とここを流れる電流の積という事になります。実質的にはDC-DCでの効率分だけダウンしますがVbatとR1に流れる電流の積、つまり充電パワーとほぼ同じになります。つまりFETのスイッチングのデューティー比を、右の((Vdc-Vbat)/R1)つまりバッテリー(Battery)へ流れる電流とVbatの積を最大にするよう決定する制御法がMPPTの考え方となります。ところがバッテリー(鉛蓄電池にしろNi-H充電池にしろ)充電電圧の僅かな変化に対し充電電流は大きく変動します。例えば12v鉛蓄電池の場合ですと充電電圧13v時の時と13.2vでは充電電流が数倍も変わったりとか。ところがこの充電電圧はバッテリーの充電量(何%充電したか)に関係します。ソーラー発電電力に対しバッテリー容量がかなり小さかったり、あるいは満タンでない限り、MPPTを使用しても充電効率を上げたいと考えるのなら充電電圧がどうであろうと、常に最大電流で充電すべきです。

結局バッテリーへの実際の充電はバッテリーの充電量が満タンに近くなっている以外は抵抗R1に流れる電流を最大に持っていくという制御となります。なお、バッテリーが満タンに近い状態においてもどんどん充電を継続しようとすると鉛蓄電池でもNi-Hバッテリーでも過充電となり加熱したり、破壊したりする場合がありようです。なのでバッテリー側の電圧で充電電流を変更するのはバッテリー側の事情によるわけですね。MPPTは充電量が少ない状態で効果が発揮されるわけです。

以下からは実際の制御ソフトについて述べていきます。因みに「電源おたすけ君」のソーラーパネルの解放電圧は21.6V、でバッテリーは12V仕様の鉛蓄電池です。

ソーラーパネルによる充電の簡略化したフローチャートが上図です。またこの時の充電電流、充電電圧と時間との関係を下の図を用いて説明します。 バッテリーの充電量(結局充電電圧で上のVbatに相当)によって充電方法は大きく3つに分かれます。 だいたい80~90%以下の充電量の場合、MPPTで充電します。といってもソーラーから取り出せる最大パワー時の電圧は、 凡そソーラーパネル開放電圧の80%弱程度(電源おたすけ君の場合17v前後)なのでR1への最大電流を得ようとする制御を行うと、必然的にソーラー開放電圧の80%弱程度に落ち着くはずなのです。

また、鉛蓄電池の電圧、ダイオード、抵抗その他を含め14~15v程度で充電することになると考えれば、 充電電流の山登りはなにも麓から登っていく必要はありません。 60%程度から上を狙えば早く到達すると思われます。さらにFETのスイッチングに関し、過渡特性の関係からあまり短い時間のオフが出力されません。 PWMを行うFETのスイッチングのデューティー比と充電電流のシミュレーショングラフを下に挙げました。 グラフのように、(今回の回路では)デューティー比が90%を超えるとリニアリティが無くなりPWMの変化に対し充電電流はあまり変化しなくなります(これはFETの速度やPWMの周波数に依存しますが)。 なので、フローのようにPWM比が90%以上で常時オン(PWM=100%)としました。

で、MPPT充電の部分は、充電電流のグラフではAの範囲に当たります。充電電流の一部を拡大したのをグラフの上部に示しました。 山登りで常に最大電流を探し続けてますので、ほぼmax(これを100%の充電電流とします)の充電電流付近をふらふらして充電し、充電電圧も急激に増加します。 充電量が満杯に近くなると蓄電池の特性から充電電流を下げることになりますが、ソーラーの場合、充電電流を絞ることが困難です。上述したようにその時の蓄電池の開放電圧より下がると0ですが僅かに高い電圧で急激に充電電流が増えるからです。 そのため、ここからは長周期でオンーオフ制御を行います。これはフローでは過渡充電としました。 過渡充電では、フローを見てお分かりのように、FET(PWM)のデューティーは100%(オン状態)かほぼ0(10%)の選択です。 今回オン時間は約1秒、ソーラーパネルの発電量によって異なりますが、オフ時間は3~10秒程度停止、のような充電を繰り返します。 平均すると10%とか40%とかの充電率に落ちます。FETをオンするのみで最大電流を求めるわけではないので、FETオン時でも最大充電量はMPPTの100%にはちょっと届きません。 これはグラフのCの範囲に入りますが、突然AからCへ移るのでなく、両方が混在するBの期間を経ます。

そしてさらに充電が進むととトリクル充電に移行します。基本的には過渡充電と同じですが、オフの時間がもっと長く、基本的には蓄電池の自然放電を補充するレベルの充電量です。 これも突然CからEに移行するのでなく、両者が混在するDを経て徐々にEが増えていきます。ここの充電量があまり大きいと過充電となり蓄電池の寿命を短くします。因みに「電源おたすけ君」のACアダプタでの充電(上の回路図におけるDC-INから入力される)は満充電になると完全に充電オフとしております。また「電源おたすけ君」は接続するソーラーパネルの最大電力を40Wとのみ規定しているのみなので、蓄電池への過渡充電、トリクル充電の充電電流を蓄電池に合わせ正しく設定する必要があります。 そこで、FETをオンした時の電流を測定し、これによりその後のオフ時間を決めているわけです。 フローでの「充電電流を計測し・・」はこの意味ですね。従って、8~9割くらいまでは急速に充電できますが、その後ちまちま充電し、繋ぎっぱなしでも過充電にはならない、という構成となっております。

以上で制御の説明は終わりますが、MPPT制御したのは結局上のグラフのAの充電量が80%以下の範囲で、しかも実際にはFETのデューティーは100%に張り付きます。これじゃあMPPTなんか使う必要ないべ、というのが素直な感想かと思います。しかしこれは正しくもあり、誤りでもある、というのが作ってみて気がつきました。

上述したようにソーラーから最大パワーを得るには開放電圧の80%弱で動作させることになります。一方蓄電池への充電電圧は仕様電圧より一般的に1~2割高目です。12v仕様の鉛蓄電池の場合13~15Vで充電したり、1.2v仕様のNi-H充電池の場合1.4v前後だったり、とか。なのでソーラーパネルの開放電圧の70数%が蓄電池の充電電圧に当たっていればそのまま接続すれば最大効率、ってことになるんですね。もっともFETだのダイオードだの保護素子だの、どうしても制御素子を直列に接続する必要があるでしょうから、その分の電圧ドロップ分を見込んでやればいい、ということになります。結局20~22vくらいの開放電圧のソーラーには12v仕様の鉛蓄電池を繋ぐと効率的となります。

一方、蓄電池側の充電電圧がそうでない場合(ソーラーパネル開放電圧の6~8割前後でない場合)、MPPTは効果を発揮し、FETはチャカチャカスイッチングするはずです。蓄電池は様々な電圧仕様に対応、なんていう充電装置だと良いかもしれませんね。ただし、それにしたってFETがスイッチング制御するということ自体が効率を落としているので、やはり初からソーラーの開放電圧や最大電力と充電池側電圧仕様及び充電容量仕様を最適化して決めておくのがシステムとして効率的かと思います。

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