和紙の灯り用LED駆動基板

超簡単な定電流充電機能付きLEDドライバー基板

20mm x 40mmと超小型両面基板でありながら、Ni-H充電池への定電流充電及びトリクル充電機能を有し、PWM(パルス幅変調)による高効率駆動の灯り用LED駆動回路に関する技術情報のご紹介です。

基板の機能と概要

「手作り灯り工房」で販売中の陶器と和紙を使った灯りに使用しているLEDドライバー基板に関する技術を全て開示してしまいます。 今回の基板(第1世代基板とします)には以下の機能が搭載されております。

  • a.Ni-H充電池への定電流充電及びトリクル充電
  • b.PWMによるLED駆動
  • c.明るさ検知(CDS)による自動ON-OFF機能
  • d.蝋燭様(チラチラ)点灯機能
  • e.LED総光量選択機能(0.4w~1.6w相当)
  • f.LED総数選択機能

以上の機能を有しながらも、小型で低価格を実現しております。どうしてこれ程多種な機能が必要なのかというと、「手作り灯り工房」で扱う灯りは全て一品モノ、デザインや大きさ機能が様々なので、その都度基板をおこすわけにいかなかったからという理由によります。下の写真1は山小屋風の陶器製灯りです。屋根を開けると単4のNi-H充電池4本が見えますが(写真2)、充電池の下には基板が搭載されており、基板にLEDが載っております。小型ですが充電機能、蝋燭様のチラチラ点灯、勿論暗くなると自動点灯の機能もありますが、基板はこのサイズに充分入る大きさである必要があります。

写真1
写真2
写真3

下の写真4はまた別のタイプの灯りです。充電機能はありませんが写真5の中央にある小さな黄色の球体の内部にLEDが装着されております。1個の超高輝度LEDで多くの光量を得るためドライブ電流を増やしたせいでLEDに放熱が必要となります。装着部が狭い為、ドライブ基板上にLEDを実装出来ませんので、直径15mm程のアルミ放熱板に実装し、これをさらに陶器に放熱する構成としております。LEDへの配線は中空の茎の部分を中継し写真6のように台座部に付けたドライブ基板に接続されております。のでLEDはドライブ基板に実装されているわけではありません。

写真4
写真5
写真6

以上のように、コストが安くて小型な基板で様々な灯りの構成に対応しなければならないという要求から上記のような機能を有するに至ったのです。(なお、それこそ色々なデザインの灯りがありますので本項最後のCreema「手作り灯り工房」のサイトをご覧ください)

超簡単なNi-H充電池への定電流充電及びトリクル充電

では、本基板の最大の目玉、ニッケル水素(Ni-H)充電池への定電流充電及びトリクル充電回路について説明致します。 最初に充電回路の経験者には当たり前のことですが、Ni-H充電池へはただ単に電源を繋ぐだけでは実現できませんよ、の常識的な説明を行います。ご存知の方は読み飛ばして下さい構いません。

Ni-H充電池の充電特性

ニッケル水素バッテリーへの充電には、過充電と充電電流に注意する必要があります。ニッケル水素充電池には容量が記載されております。1000mAhとかいうあれです。これは1000mA流すと1時間持つ電池容量という意味事です(実際には流す電流や連続性、温度等で異なりますが)。一方この値は充電電流にも関連します。1000mAhの充電池が空の場合、1Aで充電すれば1時間で充電できる(これを1Cでの充電、因みにこの場合0.5Aの充電電流では0.5Cとなり2時間かかることになるが、この単位”C”は容量に対する充電電流比と考えれば納得)ことになりますが、一方充電が満杯かどうかは充電池の電圧でしか分かりません。

充電が完了し満杯になった後もこのような高電流(0.1C以上くらい)で充電を継続すると、ニッケル水素充電池は加熱しいずれは破壊します。なので充電完了と共に即充電停止しなければなりません。しかしこれを実現するには電圧測定やら定電流やらと回路が複雑。そこで安くて簡単な回路構成の充電器では最初から0.1C以下くらいの充電(1000mAhの充電池の場合100mA以下で10時間以上かけてチマチマ充電し、その後適当な時間にコンセントを抜く)で行うという構成を取ります。これだと充電完了後も過充電や破壊するレベルには至らない。しかし充電時間がかかり、また充電完了後も0.1Cで充電継続するので充電池側の負担が大きく(加熱し)寿命を削る、さらに充電完了後にも電力を使うしコンセントを抜く手間が掛かる。

そこでちょっと高級な構成では、初期0.3~0.7Cくらいの電流で充電開始し、満杯に近くなると充電電流を徐々に下げ、最終的には0にする、という構成を取る。勿論電圧測定と電流変換制御の構成が必要でCPUを使わないと複雑、基板大きく、価格アップ。それに充電完了後、充電を完全に切ってしまうと充電池は自然放電を開始、長期的には過放電となって容量が低下、即ちこれも充電池寿命を削る事になります。結局充電完了後も、自然放電を補うために絶えず微少電流により充電する構成が望ましいのです。これをトリクル充電と呼びます。まったくバッテリーの充電とは厄介なものです、ちゃんとやるのは。 以上、まとめますとニッケル水素充電池の充電は、初期大電流(0.3C~0.7C程度)で定電流による高速充電を行い、満杯近くになったら充電電流を徐々に下げ、充電完了後トリクル充電に移行する、というシステムが急速充電でありながら充電池寿命に優しく、過充電過放電に対応、コンバータをコンセントに繋ぎっぱなしで構わないので手間が無い、という理想的な構成が実現出来る事になります。 こんなのをCPUやAD変換等使わないで簡単にやれる? これが本基板の目標なのです。

定電流充電回路を保護素子ポリスイッチで実現

ポリスイッチ(PSW)はモーター等異常動作時の短絡電流保護素子として良く使用されます。一般的なヒューズは所定電流以上が流れると開放(遮断)状態になりますが、るのに対し、PSWは所定電流が流れると自己発熱により高抵抗(所定抵抗)を維持し一定電流以上流さないようになりますが、電流が下がるともとの状態に復帰する、という素子です。

図1

左図1のような特性を持ちます。サーミスタの逆特性といった感じですね。

図2はポリスイッチRXEFシリーズの特性を示しました。細かいところは抜きにして、ここで重要なのは、保持電流(IH)とトリップ電流(IT)です。トリップ電流とは、この電流以上が流れると高抵抗値にPSWが状態遷移し、トリップ時間経過後に保持電流に保持する、という内容です。

図2
  • IH⇒保持電流:20℃静止空気中でトリップせずに流せる最大電流
  • IT⇒トリップ電流:20℃静止空気中でトリップする最少電流

RXEF030を例にとると、このPSWに0.6A以上流れると最大トリップ時間である3秒以内に0.3Aに保持される、ということになります。トリップ時間は流れる電流に逆比例する為、初期電流が多いとその分早くトリップします。なので、過電流保護素子なわけですね。因みにRMIN(RXEF030の場合0.88Ω)はPSW自体の直列抵抗値です。下記しますが充電電流の最大値既定の為にこれも重要因子です。

この保持電流を充電時の定電流源としたのが発想の原点なのです。充電量が空に近い充電池に対しPSWを介し所定電圧を直列接続すると、瞬間的(トリップ時間)には大電流が流れますが、その後保持電流で継続充電されることになります。PSWは様々な種類がありますので、この保持電流が充電池の0.3C~0.7C程度となるような型を選択する事になります。

充電回路

では実際の今回の基板の回路図を下に載せちゃいました!

図3

CN4にAC-DCコンバータからの6.0vが入力されます。ショットキーダイオードD1を介しPSWが接続されCN1にはニッケル水素充電池4本が直列接続されます。充電回路はこれだけです! これでトリクル充電も可能なの、という疑問も説明致します。 なお、ダイオードD1は充電池(CN1)から電源(CN4)への逆流防止用で安全の為必要。 白色LEDの場合、最小でも3.3v以上の駆動電圧が必要で、PWM駆動(別項参照)を考えると入力電圧は3.8v以上は欲しいところ、かつ7時間以上は点灯させたい、とかいろいろ考慮しニッケル水素充電池4本を直列接続する構成に決めました。 Ni-H充電池の定格は1.2v、過放電に近い空の状態では1.0v以下まで落ちますが、充電完了時は1.4v以上となります。つまり直列電圧では5.6v以上で満杯近くなります。

ところで最近のAC-DCコンバータの精度は非常に高く、実際的に6.0v±0.05vくらいに入ります。ここで空の4本直列のNi-H充電池(約4.0v程度とします)がCN1に接続され、CN4に直流電源6.0vが供給された場合の過渡現象を説明します。D1はショットキーなので順電圧降下Vfは温度や電流で変わりますがここでは0.4vと仮定、回路例にあるPSW(RXEF030)のRMINは0.88Ω程度なので、  (6.0 – 0.4 – Vt) / 1.33 < 0.3  から、初期瞬間的に1.8A近い電流が流れます(充電池の内部抵抗は0と仮定)。

図4の特性図からRXEF030の場合1.8Aのトリップ時間約1秒後に0.3Aの保持電流に保持されることになります。つまりNi-H充電池1000mAh x 4個直列の場合、0.3Cでの定電流充電が行われるわけです。しかし充電が進み充電池側の電圧(CN1の端子間電圧)が上昇し、保持電流以下の充電電流つまり(6.0 – 0.4 – Vt) / 1.33 < 0.3  (1.33=Rave:RXEF030  の平均抵抗とした) から 4本直列の充電池電圧:Vt > 5.2v  となると、保持電流0.3A以下となり、PSWはトリップ状態から徐々に復帰し、その後充電電流は充電池電圧の上昇と共に低下する。

図4

最終的には Vdc-Vf   

  • Vdc=直流入力電圧(ここではAC-DCコンバータからの入力電圧)
  •   Vf=D1の微少電流での順電圧降下

 で、25℃でVf (@10mA)=0.2v程度のダイオードなので、実際には限りなく5.8v(1.45v/個)に近い状態をキープすることになります。つまり充電電流はこの満杯状態において充電池の自然放電による放電量を丁度相殺する電流で均衡し微少電流での充電を継続することになります。これは理想的なトリクル充電に移行したことになります。その為CN4への電源供給を停止しなくても良い、つまり電源を繋ぎっぱなしでも過充電にはならない、という事になります。

図5に充電時の時間と充電電流、充電電圧の関係を下図4に模式的に表しました。

PSWを使う事で以上のように超簡単な回路で理想的な充電特性が得られるのですが、既にお気づきのように重要な注意点があります。

  • 充電池側の定格電圧に対する入力電圧の関係はきっちり適合させる必要がある。⇒ニッケル水素充電池を何個直列接続するかで指定コンバータの出力電圧を決定。(Ni-H充電池1個当たり1.45v前後をフル充電電圧とし、この直列接続個数+0.2v程度にDC入力電圧を設定すべきである。例⇒6個直列時:6x1.45+0.2=8.9v⇒9.0vDCとか)
  • 充電池容量によりPSWの型を選択すべきである。(何mAhのニッケル水素充電池を何個並列接続するかでPSWの型名を決定、高い電流値に設定する程Rminも小さくなるため、初期充電電流が高くなるのでこれとの兼ね合いにも注意)

以上のようにどの充電池どのように使うかにより、基板やコンバータが一対一に対応されてしまうのですが、これさえ留意すれば理想的な充電回路となるのです。 *特許は申請しておりませんので、本資料で公知という事でどなたでも使用して構いませんよ、但し従来例調査は行っておりませんが。)

その他の特徴

b.パルス幅変調(PWM)によるLED駆動

白色LEDは仕様に記載される最大定格以下の順電流を流す事で発光させますが、基本的に3.5v程度の順電圧を有するダイオードなため、直流電源にそのまま接続する事が出来ません。なので、簡単で安い回路では下図6のようにLED(PD)に直列に抵抗Rを接続し電流制御します。例えば定格電流If=350mA で光らすLEDの場合ですと、Vin=6.0vの場合、(6.0 – 3.5) / R = 0.35  より、R=7.14Ω の抵抗を付ければよいのですが、Rでは 2.5 x 0.35=0.875w を消費します。一方LEDの消費電力は 3.5 x 0.35=1.225w です。結局全消費電力の42%がRで無駄に消費されるばかりでなく、Rが加熱する為その放熱対策が必要になります。

図6

またVinやRの変動により光量が変わりやすい、抵抗Rが大きい、という欠点もあります。勿論Vinが高いと効率はさらに悪化、逆に下がると電源変動の影響を受けやすくなります。

今回使用した回路はパルス幅変調(PWM)用の素子を使用しました。パルス幅変調とは 入力の直流をスイッチングし各パルスのON-OFFのデューティー比を変えることで出力の等価的電圧を制御する変調方式です。図3-IC1がそれで模式的に図7に示します。Vinは約6vの直流電圧ですが、ICIの出力は数十kHzで発振してますが、これをコイルLとコンデンサCで平滑しLEDに流す電流Ipdが0.35Aになるように発振パルスのONのパルス幅を制御しているのです。つまりONパルス幅が広くなると出力電圧は高くなりIpdは大きくなり、逆に細くなると小さくなる、といった制御ですね。ついでに言うとこの電流は図3の抵抗R1~R4に流れる電流による電圧降下分を測定する事で帰還をかけております。

今回R1~R4は全て1Ωの並列接続なので0.35A流すには3個を並列に接続し0.33Ω相当とし、帰還を掛ける仕様になっております。この電流測定用の回路での消費分はせいぜい0.1w程度です。PWM制御でのメリットは図6における余分な抵抗が無い為省電力と小型化と言えます。発熱はLEDのみで80数%の発光効率となります。

図7

従って「e. LED総光量選択機能(0.4w~1.6w相当)」については、抵抗R1~R4を実装するか否かで決定可能です。

c.明るさ検知(CDS)による自動ON-OFF機能

これは、bで説明したPWM用素子(IC1)のADJ端子の電位を制御する事でもパルス幅を変更可能です。最大光量(最大順電流)はR1~R4で決定されますが、その範囲でADJ端 子電位で(デューティー比)明るさが変わるのです。これは図3-CN2にCDS(明るさ検知センサ)を接続する事で実現しております。なお、このADJ端子をGNDにするか、2.5v以上にするかでLEDのPWMのONパルス幅が最大又は0が決定される、つまり図3-CN5がLEDのON-OFF-明るさ検知モードの切り替えスイッチとなります。

d.蝋燭様(チラチラ)点灯機能

この機能は図3-IC2が司ります。この出力VoutがPWM素子の明るさ調整端子ADJを揺さぶる事で効率良好なままLEDの順電流を揺らすんですね。 この機能がいらない場合は素子を実装せず、VinとVoutを短絡すれば済みます。

e.LED総光量選択機能(0.4w~1.6w相当)は項目aで説明済。

f.LED総数選択機能

これは単に図3-CN3が存在する事で可能です。 LEDは実際のところ並列接続してもさほど光量変化はありません。なので、R1~R4を接続し、CN3を使用する事で並列する個数をどんどん増やす事が可能です。もっとも、LEDへの電流限界仕様はコイルやダイオード他の仕様から決まってますが。

基板概形説明

写真7が本題のLED駆動基板の実装面と裏面です。手作業で部品実装する為チップは2125タイプと大き目、さらに両面基板です。 写真8が部品を実装したところです。R1,R2,R4の3か所に1Ωが実装されている為この基板はLEDに0.35A(1.2w)流す構成となります。またIC2(蝋燭様点灯IC)が実装されておらず、Vin-Vout間が短絡されている為、チラチラな点灯を行わないタイプとなります。またD1も短絡してあるので充電タイプではありません。薄茶の丸いのがPSWです。

写真7
写真8

このように基板への実装形式を変更する事で明るさや充電機能、蝋燭様点灯機能、等を選択出来るようになっております。なお、実装面の上下に2か所、裏面に1か所パワーLEDを実装可能なようパターンは取ってありますが、回路図3からも分かるように、これは全てLEDを実装するという事でなく搭載する灯りの構成に合わせ載せられるように作ってあります。勿論別のタイプのLEDであったり、放熱が必要であったり、複数を必要な場合は、CN3から配線で取り出せる構成となります。

なお、本基板の販売も行いますのでご興味のある方は「お問い合わせコーナー」からお知らせください。

次回はPICマイコンを使ったさらに高級なドライブ基板を作りましたので、その制御について書いて行きたいと思いますのでご期待ください。

手作り灯り工房

陶器や和紙を使い、暖色系の超高輝度LEDを光源とした、全ての一品物かつ全て手作りの灯りを扱ったお店です。もともと電気技術者で某企業のプリンターなどの研究開発を行っていたぐうたらおやじが定年後陶芸家の姉に指導を受け、さらに和紙の灯りの高名な先生に師事、高機能な照明ドライブ回路や陶器と和紙をどのように一体化させたら良いのか、一点一点迷いながらもこれまで世の中に存在しなかった独特な灯りを作ろうと日夜努力してます。…

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