和紙と陶器の灯り「かぐや姫」の作り方

陶器の台座ランプシェードに和紙を貼ったLED灯りの作り方

和紙及び陶器の魅力

和紙は一般的な紙(洋紙)とは作り方や素材が異なります。手漉きの和紙は日本の伝統工芸で、耐久性、保存性、柔軟性、安定性が高く世界中の文化財の修復にも利用される程優れたものです。東大寺正倉院には1300年前の美濃和紙が残っているほどです。和紙の原料は楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)が代表的ですが、全国各地でその地方古来の伝統的な製法で作られており、越前和紙、土佐和紙、阿波和紙等、産地の名称が付いております。なお、山梨県の市川和紙では主に三椏を使用しており、今回の「かぐや姫」もこの市川和紙を使用しております。

一方陶器です。非常に厄介な製造工程であるにも拘わらず、便器は現在もプラスチックでなく陶器を使用しておりますように、陶器は汚れにくい性質があり、長期間変色せず、非常に固く、耐久性高く、それでいて温かみがあり味わいの深いものです。特に一品一品粘土を捏ねて形作り釉薬を塗り窯で焼いて固めた陶芸品は、1000年以上たっても色あせぬ美しい輝きを放つ土と炎の芸術です。しかし陶器は焼く過程において十数%も縮んだり形も変わる場合もあります。器のように独立したものであれば問題ありませんが、陶器にスイッチやインレット等材質の異なるものを接続する場合、手づくりであるがため非常に厄介です。 このような、特殊なシステムでの陶器の作り方については項をあらためて述べる事とし、今回は和紙の部分に特化して代表的な灯りの作り方について説明していきたいと思います。

竹を切ったような灯り「かぐや姫」

写真2-1.

竹の切り株からかぐや姫が出てきそうな状態を和紙の灯りで表現しました(写真2-1)。その為に切り株の内側を明るくしております。台座部分は陶器、竹は真鍮線の骨格に市川和紙を貼り、光源はLEDを4個使用しております。最初はなんとなく作ったのですが、作るとすぐ売れ結局数個作成した人気製品です。実は作り方も固定したものでなく、その都度工夫しながら少しづつ変えておりますがやりやすい方法を模索しながらですが、今回はその一例という事で和紙と陶器の灯りの一連の作成過程を説明致します。

台座となる陶器を作る

写真3-1は台座に使用する陶器ですが、写真上部の明るさセンサ用の孔、写真下部にインレット用の孔とスイッチ用の孔の3個が空けてあります。これら電気部品のサイズは固定なので、孔の直径は大きすぎても小さすぎてもダメで適切な大きさに空いていなければけなければなりませんが、上述したように陶器は焼く過程で孔が歪んだり形状が変わったり、サイズが小さくなります。さらに釉薬や土の残りが穴の淵に付いていたりすると、焼きあがった後は非常に固い為おいそれと削る事が困難です。

写真3-1.

その辺の作り方は別稿で詳述します。また、内側には真鍮線の挿入部分が3か所あります。ランプシェードとなる和紙の構造物と陶器とをドッキングする為の孔が空いております。以上のように、陶器を作成する段階で粘土で形作る時に、ある程度灯りとしての全体の構成を想定しておく予め作っておく必要があるのです。

陶器に電気部品を付ける

今回は別稿で説明した第1世代の基板を使用しております。基板上にLED1個が上方に向かって照射するようセットし、基板はエポキシ樹脂の接着剤で熱伝導ゴムを介し陶器に接着させます。細長い竹を全体的に照らすので、竹の下部に設置したLED光源を上方に向かって、また竹の上部に設置したLED光源を下方に向かって照射させます。

写真4-1.

光源はLED4個を総計1.6wで光らせるため、基板上のLEDは0.4w相当で、発熱はほとんどありませんが、念のため熱伝導ゴムで陶器へも放熱させます。明るさ検知センサとインレットは孔に挿入し、やはりエポキシ樹脂の接着剤で固定。スイッチはナットで固定します。残り3個のLEDは上部の竹の節の部分に装着する為、外付けLED用配線で取り出しておきます。

竹の下部骨格の作成

真鍮で和紙ランプシェードの骨格となる部分を作成しますが、陶器との接続部は現物合わせです。最初に陶器の内径に合う輪を作成、その後輪から真鍮線挿入孔に入るような位置に爪を出しはんだ付けします。さらに陶器内径とほぼ同じサイズの竹の節となる輪を作成します。陶器内部の真鍮線挿入孔に装着する輪と竹の節となる輪とは、写真5-1のように縦の真鍮線でそれぞれはんだ付けします。竹のイメージを出すため、縦ラインは少し内側に湾曲し、節の近くで少し山になるようなカーブにします。ここは円筒形なので縦線は12本と多くしました。これが少ないと多角形のように

現物合わせでおおよその位置をはんだ付け固定したら、陶器から一旦取り出し、残りの部分をはんだ付けします。写真5-2は、竹下部の縦ラインのはんだ付けを終了した段階です。この状態だと、挿入孔取り付け部の爪や、電気部品部分をよけた構成が良く分かりますね。 なお、はんだ付けの際はフラックスを真鍮線に付けて行いますが、フラックスが残っていると和紙を貼った際に黒く滲むことがあります。その為写真5-2に対し横ラインで補強の骨格を入れた段階(写真6-1参照)で真鍮線の構成部分を水洗いしておきます。

写真5-1.
写真5-2.

竹下構成部と陶器との接続

写真6-1.

陶器と真鍮構成部との接続は、写真6-1のように、和紙が陶器内部にぴったり入るように、陶器の内側に入る部分の和紙貼りを終了した段階で行います。真鍮構成部の下爪を陶器の挿入孔に挿入し接着させて固定する為には挿入孔に手が届く状態にしておきます。挿入し接着するのは竹下部の全てに和紙を貼った状態では行えないからです。また外部LED用の配線は写真6-1のように光源からの影とならないよう、裏側(スイッチとインレットがある側)の縦ラインに沿ってセメダイン系接着剤で固めておきます。

光源の配置

写真7-1.

残りの3個のLEDを写真7-1のように基板上に配置し、竹の上部節の部分にはんだ付け設置します。写真手前が前方になりますが、向かって左右の位置上方に向かって2個、中央の位置下方に向かって1個配置し、基板は多少前方に傾けて装着されます。これはこれから作成する竹切り株の内側を照射し、かつ竹の下方は全体的に照射するようにするためです。基板は放熱も兼ねるため、真鍮のワイヤに左右端部ではんだ付けし ます。

竹下部の和紙貼り

写真8-1.

この段階で竹上部との接続部分を除き、和紙貼りを行っても良いです(写真8-1)。竹上部との接続部分は、竹上部が出来上がった際にはんだ付けする為、この段階では和紙を貼れないからです。なので、項目8は最後にまとめて和紙貼りを行っても良いのですが、和紙貼りは楽しいので早々にやってしまいました! 和紙の張り方は後述します。

竹上部の作成

写真9-1.

いよいよかぐや姫の出てきそうな竹の切り株(竹上部)の作成に入ります。竹下部の節より少し径の小さい竹上部の節を作ります。次に竹の切り株内部を構築する楕円部分を二重に作成し、写真9-1のように、少し内側にカーブさせたラインで吊るします。このようにして竹下部の節左右に取り付けたLEDの光が切り株内側の壁に当たるようにしております。突起の部分を介し竹下部節とはんだ付け接続するようになります。なお竹の内側のはんだ付けを終了した段階で、外側のはんだ付けは位置決めする程度の段階で内側の和紙貼りを終了させます。外側のラインをはんだ付けしてしまうと手が入らなくなり和紙が貼りにくいからですりにくいからです。

竹上部切り株の骨格作成

竹上部切り株内側の和紙貼りを終了した後、外側の縦ラインのはんだ付けも行います(写真10-1)。節に接続する部分は少し内側に凹みを付けて、竹の節の印象を作ります。

写真10-1.
写真10-2.

竹上部切り株内側の和紙貼りを終了した後、外側の縦ラインのはんだ付けも行います(写真10-1)。節に接続する部分は少し内側に凹みを付けて、竹の節の印象を作ります。 次に写真10-1,10-2の段階で竹下部の骨格と結合させます。

写真10-3
写真10-4

最初は上部竹の節の突起部分を下部竹の節の適当な場所に位置合わせしながらはんだ付けします。次に周囲も4か所以上小さな真鍮線を使い固定します。この時竹笹の葉を忘れずに付けておきましょう。 写真10-3,10-4は上下を接続後少し和紙貼りを行った状態で電気系統のチェックを行ったところです。

ひたすら和紙貼り

最後に竹上部、下部の和紙の貼り付けです。ここが結構楽しい作業です。和紙貼りのやり方を説明しておきます。写真11-1のように骨格の真鍮部分に(私は綿棒を使っておりますが)水性ボンドを薄く塗っておきます。次に切断面が真鍮の骨格にほぼ合っている和紙を写真11-2のように貼り付けます。なお、今回のように表から貼る場合、切断をはさみやカッターで切ってはいけません、手で切るか後で述べる水切りで切ります。接合箇所がぼけて自然になるようにする為です。


写真11-1.
写真11-2.
写真11-3.

写真11-3のように、和紙を貼るべき部分の右側の余分な部分は、筆に水を含ませた筆で、真鍮ラインの外側に沿って線を描きます。そして真鍮ラインを左手の親指で抑えながら右手で和紙の右側を静かに引っ張る事で切断してゆきます。これが水切りです。和紙は水にも強いのですが、絡み合った繊維は水で解け(溶けるではありません)易いのです。この時真鍮のはんだ付けに使ったフラックスが付いていると、水と一緒に和紙に浸透し黒く変色するので、フラックスは良く拭きとっておくか、水洗いしておきましょう。 なお、水切り後にラインよりはみ出た繊維等はライン裏側に回しこみ張り付けてしまいます。

完成

最後まで和紙を貼り終わって終了。スイッチとインレットは裏側に、明るさ検知センサは表側に配置されるようになります。上記のように光源であるLEDは灯りの他の構造物と一体化しており、取り換えられません。光源となるLEDは電球を取り換えるように取り換えられないのか?という質問を良く受けますが、上記のようにLED素子としての仕様(特に電流及び放熱)を適切に設計すれば(ディレーティングと言います)寿命はLED素子単体としての2万時間以上と考えられます。

写真12-1.
写真12-2.

一般的なLED電球という意味では、内部に直流化電源やドライブ回路を有しますので、他の電気素子(特に電源に使用される電解コンデンサ)の寿命から、LED電球としての寿命が制約されます。この灯りに使用している回路はドライブ基板及びLEDのみですので初期接続不良等除けばLED単体の寿命に匹敵すると考えており、従ってLEDを取り換える事を想定しておりません。そのくらい長期に使っていただけたら灯りもうれしいでしょう。なお、本灯りの直流化は外部の付属AC-DCコンバータで行っております。

以上のように、日本の伝統工芸である和紙と陶器を使った特異なデザインの灯りに対しても、電球のように光源の発する熱による空間を取る必要なく、ランプシェードを満遍なく照らせる射可能な構成を複数のLEDを使用する事で可能としております。他にも様々なデザインの灯りがありますので、下記サイトをご覧ください。

手作り灯り工房

陶器や和紙を使い、暖色系の超高輝度LEDを光源とした、全ての一品物かつ全て手作りの灯りを扱ったお店です。もともと電気技術者で某企業のプリンターなどの研究開発を行っていたぐうたらおやじが定年後陶芸家の姉に指導を受け、さらに和紙の灯りの高名な先生に師事、高機能な照明ドライブ回路や陶器と和紙をどのように一体化させたら良いのか、一点一点迷いながらもこれまで世の中に存在しなかった独特な灯りを作ろうと日夜努力してます。…

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